コーヒー・カンタータ
♪♪♪おしゃべりはやめて、お静かに♪♪♪
1529年と1683年の二度にわたるトルコ軍のウィーン包囲は、
ヨーロッパに大きな災害をもたらしましたが、同時に新しい文化や生活様式に
触れる機会にもなりました。
コーヒーもその一つで、この新しい贅沢は、葡萄酒や煙草と同じように、
音楽家に恰好の材料を提供することになったのです。
コーヒー愛好家であったバッハの『コーヒー・カンタータ』
1645年にベネチアにヨーロッパで最初のコーヒー店が開業しました。
最初のコーヒー店が開店してから10年ほどで、その数は数千に及んだといいます。
1674年、ロンドンの主婦たちは結束し、コーヒーハウスに入り浸っている亭主族への抗議デモ
「コーヒーハウス反対運動」を展開します。この波は他のヨーロッパ諸国へも飛び火していきます。
1670年になってドイツにもコーヒーが入り、1679年にはドイツ初のカフェが登場します。
そして、ドイツでもコーヒー騒動が起きます。
1734年頃、コーヒー愛好家であったバッハは、『お静かに、おしゃべりめさるな』というカンタータを
ライプツィヒのカフェで、自ら指揮棒を振り初演しました。
これが、『コーヒー・カンタータ』と呼ばる、風刺喜劇です。
もともとは「おしゃべりをやめてお静かに」という曲名であったのが、「コーヒーカンタータ」として有名になっています。
歌詞は、当時の人気詩人・ピカンダーによるもので、
1727年に出版した詩集の中のコーヒー熱を諏刺しているを喜劇的カンタータの素材に転用し、
バッハに提供しました。
「千のキスよりすばらしく、マスカットぶどう酒より甘いわ。コーヒー、コーヒーはやめられない」
という娘に対して、「コーヒーをやめないなら外出禁止だ」という父との掛け合い、
さらには家中を巻き込んでの大騒ぎが展開されるというものです。
この歌詞は当時かなりの評判を呼んだそうで、バッハ以外にも2〜3人の作曲家が曲をつけたといいます。
コーヒー騒動(コーヒーハウス反対運動)が生んだ名曲か、
コーヒー愛好家バッハの名曲か、
ここにも、コーヒーは人々の間で大きなブームを巻き起こしていたことがわかりますね。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
18世紀に活動したドイツの作曲家。「近代音楽の父」と称される巨匠である。